その朝、彼女は突然やってきた。 そして僕は、理性を置き去りにした――。 遅刻ギリギリの朝。 慌ただしく玄関を飛び出そうとしたその瞬間、インターホンが鳴った。 モニターに映ったのは、同じマンションの516号室に住む稲垣さん。 予想外の訪問に、思わず胸が高鳴る。 ――まさか、稲垣さんとも“そういうこと”ができるなんて。 昨夜、佐倉さんと新井山さんが稲垣さんの話をしていた。 「次は彼女も誘ってみようか」 その会話を、彼女も聞いていたのだろうと、僕は早合点してしまった。 玄関が閉まり、ふたりきりの空間。 戸惑いと ...